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杭州・西泠印社の隠れた至宝:近代100年の情熱が息づく「四泉」巡り

2026-03-12




小雨に煙る西湖の孤山。滑りやすい山道を傘を杖代わりに登っていくと、喧騒を離れた静寂の中に、西泠印社の真の魅力が姿を現します。多くの人が見落としがちな、4つの泉にまつわる物語を紐解いてみましょう。

 

 

1. 文泉(ぶんせん):四泉の中で唯一の「古泉」

 

西泠印社のメインスポットのすぐ傍らにあるのが「文泉」です。この泉は、四泉の中で唯一「元々そこにあった古い泉」であり、他の3つは後世に人工的に掘り当てられたものです。 「文泉」の二字は兪樾(ゆ えつ)の筆によるもので、その歴史の重みを静かに伝えています。

 

 

2. 閑泉(かんせん):富豪の足跡と失われた銅像

 

文泉から小さな橋を渡った先にあるのが「閑泉」です。

 

 

• 歴史: 1921年に人工的に掘り出されました。

 

• 揮毫: 1921年、南潯の富豪として知られる張鈞衡(ちょう・くんこう)によって書かれました。彼は『漢三老石碑』の救出劇でも多額の寄付をした人物です。

 

• 悲劇の記憶: かつてここには、1921年に日本の会員浅倉文夫から贈られた呉昌碩の銅像が置かれていましたが、この銅像はその後45年間にわたり、西湖を望む閑泉のほとりで静かに時を刻んできました。しかし、1966年の文化大革命の波はこの至宝をも飲み込みました。

現在私たちが目にすることができる呉昌碩像は、1978年に中国の彫刻家・周広明によって再建されたものです。

 

 

 

3. 潜泉(せんせん):創設者の情熱が眠る場所

 

漢三老石室から下った場所、遁庵の背後にひっそりと佇むのが「潜泉」です。

 

 

• 由来: 1915年、西泠印社の創設者の一人である呉隠が遁庵を建設する際、水路を整備して掘り当てました。

 

• 名に込められた想い: 「潜泉」という名は、呉隠の号でもあります。 泉の傍らには、彼の銅像が今も静かに佇んでいます。

 

 

4. 印泉(いんせん):日本との深い絆の証

 

小盤谷を抜けた先にある最後の一つが「印泉」です。

 


• 発見: 1911年に水源を整理していた際に発見されました。

 

• 日本の足跡: 「印泉」の文字は1913年、初期の日本人社員である長尾甲(長尾 雨山)によって書かれました。

 

• 豆知識: 当時、日本人の正社員第一号は河井荃廬であり、呉昌碩の唯一の日本人弟子とされていました。長尾甲はそれに次ぐ、社にとって極めて重要な日本人会員でした。

 

 

結び:山門の先にある「真の西泠」へ

 

西泠印社を訪れる際は、有名な山門で写真を撮るだけで終わってはいけません。文泉から閑泉へ、そして潜泉、印泉へと巡る道は、西泠印社がどのようにして築かれ、いかに国際的な文化交流の場であったかを教えてくれます。

 

次に杭州を訪れる際は、ぜひこの「四つの泉」を探してみてください。そこには、教科書には載っていない、石と水と情熱の物語が流れています。

 

(邵三房)

 


 

 

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