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宋 李公麟 《西園雅集》 台北故宮博物院
台北故宮博物院の百年院慶大展で、なぜ「西園雅集」が特別な展示テーマとして選ばれたのでしょうか。これは単に歴史上の事実だったのか、それとも後世の想像の産物なのか。
この問いに答える鍵は、展示の中心にある李公麟の《西園雅集》トップ文人たちが集い、談書論画に興じる様子を描いています。その場は賑やかでありながらも洗練されており、まさに当時の「夢幻の連動」と言える光景であり、後に「文人精神」の代名詞となりました。

元 趙孟頫《西園雅集図》台北故宮博物院

明 仇英 《西園雅集図》台北故宮博物院

宋 徽宗 《文会図》台北故宮博物院
しかしながら、「西園雅集」の史実性については、後世の学者たちによって絶えず議論されています。主流な見解では、雅集に関する記録の多くが南宋以降に出現しており、その多くに主観的な誇張が含まれているとされています。

清 梁詩正 《臨米芾西園雅集図記巻》 台北故宮博物院
特に議論の火付け役となったのは、参加者とされる米芾が記したとされる《西園雅集図記》です。この文章は、宴会の設営や来賓の服装、神態などが詳細に記録されていますが、学者たちは、会合が開催された元祐年間(1086-1094年)という時期に、米芾が参加できたのか時系列的に疑問があると指摘しています。さらに、この文章自体が米芾の著作ではないという説もあります。
加えて、起点とされる李公麟の《西園雅集》でさえ、偽作であるという説も唱えられています。
博物館が伝える「千年続く文化理想」
もしこれらの作品に真偽の議論があるのなら、台北故宮の展示選定は厳格さを欠いているのでしょうか?
私はそうは思いません。この「西園雅集」の展示は、作品の「真跡」を提示すること以上に、中国人千年以来の「文化理想」に敬意を表し、その思想の継続性を表現することに重点を置いています。これにより、私たちは古代文人の精神世界に触れる道を開かれているのです。
そのとき、作品の「真偽」の問題は、それ自体が哲学的な問いになり得ると感じます。最終的な結論は、私たちが何を重視し、どの角度から思考するかにかかっていると言えるでしょう。

晋 王羲之《快雪時晴帖》台北故宮博物院
例えば、乾隆帝の三希堂に収められた王羲之の《快雪時晴帖》や王献之の《中秋帖》は、現在、真跡ではない可能性が高く、優れた模写とは言えないと考えられています。しかし、この事実が、私たちが二王(王羲之・王献之)の書法の理想形(法度)に抱く憧れを妨げることはありません。また、唐代の李思訓や周昉の伝世絵画についても、作者が本人かどうか断定しがたい「不確定性」があるからこそ、かえって魅力と想像の余地が生まれているのです。
蘇軾の扁舟に乗り込むような体験
今回の展示では、個人的に古代文人の精神に直接触れる貴重な機会を得ました。

宋 蘇軾 《書前赤壁賦》細部 台北故宮博物院
私が蘇軾の《書前赤壁賦》の前に立った時、学生時代に暗唱した記憶が蘇り、特に「浩浩乎如馮虚御風,而不知其所止;飄飄乎如遺世獨立,羽化而登仙。」(広大で、まるで空を駆け風を操っているようで、その留まるところを知らない。ひらひらと、あたかも俗世を離れて独り立ちし、羽が生えて仙人になるようだ。)という一節から、時空を超えて蘇軾の扁舟に乗り込むような感覚を覚えました。

宋 蘇軾 《書前赤壁賦》細部 台北故宮博物院
「秘密を探り当てるような」喜び
古代書画の探求が現在進行形であることを示す「新発見」も、今回の展示で体験できました。

宋 黄庭堅 《自書松風閣詩巻》 台北故宮博物院
黄庭堅の《自書松風閣詩巻》のような名跡に使用されている「砑花箋(がかし)」が、という事実です。今回、おそらく故宮が特別に照明を調整したのか、あるいは私がその「秘密」を事前に知っていたからなのか、砑花箋の羅紋箋(らもんせん)が光の角度によって時折、紙上に鮮明に浮かび上がるのを目にしました。もしこの砑花箋が最初から広く知られていたなら、私はこれを見たときに、あの「秘密を探り当てるような」幸福感を得ることはなかったでしょう。このような探索こそが、私を最も惹きつけるのです。
古代書画は、考古学や青銅器、磁器のように明確な「鑑定基準」を持つことが難しい分野です。しかし、まさにこの「不確定性」こそが、古代書画特有の探索の魅力を形作っていると私は考えます。芸術の真の高みを追求し、科学的な鑑定基準を確立し、異なる見解を理性的に受け入れながら真実へと近づく姿勢こそが、古代書画の最も魅惑的な点なのです。
(不同艺)
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