書道
【文房の深淵】1400年の時を繋ぐ「墨」の記憶――『致道堂日本古墨図録』が明かす東アジアの美学
2026-05-11

書道を愛する者、あるいは東洋美術の蒐集家にとって、本年は歴史に刻まれる一年となるかもしれません。長年、実態が謎に包まれていた「日本古墨」の全貌を解き明かす、記念碑的な一冊が誕生しました。
それが、丁徳朝氏の編著による『致道堂収集日本古墨図録』です。
1. 世界初、259種の古墨を「原大・高精細」で完全収録
本書の最大の衝撃は、江戸時代から明治時代にかけての日本古墨を中心に、東アジア各地(中国、朝鮮、ベトナム)の古墨259種を厳選し、初めて高精細・フルカラー・原寸大で公開した点にあります。
これまで日本古墨の体系的なコレクションは、昭和期の散逸などにより全容を把握することが極めて困難でした。本書は、著者が長年かけて蒐集した200余種の名品を、器物学、材料技術、画像解析といった多角的な視点から分析した、他に類を見ない「古墨の百科全書」となっています。
2. 「空海」から「古梅園」へ:受け継がれる古法の遺伝子
日本の製墨史は平安時代の空海(弘法大師)が唐から油煙墨の製法を持ち帰ったことに始まると伝えられています。奈良の興福寺二諦坊は、その発祥の地として今も特別な意味を持っています。
特に注目すべきは、日本の墨が中国では失われた古法の遺伝子を今に伝えているという事実です。
- 古法の保存: 日本の松煙墨は、金代の北方や『天工開物』に記された古い製法を現代まで比較的完全に留めており、中国の墨法研究にとっても極めて高い価値を有しています。
- 古梅園の執念: 天正年間に創業した古梅園の松井氏は、中国の巨匠・程君房や方于魯に学び、さらには清代の曹素功とも比肩する名品を生み出そうと、心血を注ぎました。
3. 「山川異域、風月同天」:墨に刻まれた日中の絆
本書には、日中の文化交流を象徴する興味深いエピソードが数多く収められています。
- 司馬温公の救出劇: 中国ではお馴染みの『司馬光の瓶割り』図は、中国国内では画像資料が散逸してしまいましたが、江戸から明治にかけての日本で古墨の意匠として大切に保存されていました。

- 蘇東坡の「海南墨」: 北宋の文豪・蘇東坡が海南島で編み出した製法は、日本で「海南松煤東坡法制」として愛され、独自の美意識で昇華されました。
- 清代文士の驚き: 乾隆年間に長崎を訪れた沈草亭は、古梅園の墨を使い、その潤いと光彩に「あたかも神の助けがあるようだ」と驚愕の声を残しています。
墨は「多元文化の結晶」である
日本古墨は、儒教、仏教、神道が融合した日本独自の文化背景を持ちながら、同時に「漢字文化圏」としての共通言語を色濃く反映しています。
本書は、単なる図録の域を超え、情報爆発の時代において「知識をいかに咀嚼し、美学へと昇華させるか」という問いに対する一つの回答を提示しています。古墨を手に取ることは、1400年前の東アジアが共有した「静寂の美」に触れることに他なりません。
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